EC-CUBEからShopifyへ|リプレイス事例と移行時の落とし穴・注意点まとめ

EC-CUBEからShopifyへの移行が増えている理由

昨年(2019年)12月20日には、経済産業省から「株式会社イーシーキューブが提供するサイト構築パッケージ『EC-CUBE』の脆弱性等について」が発表されました。これは、EC-CUBEを利用しているECサイトに対して、クレジットカード番号等が窃取される危険性があるという重要な注意喚起であり、多くの事業者がセキュリティ体制を再考するきっかけとなりました。

株式会社イーシーキューブが提供するサイト構築パッケージ「EC-CUBE」の脆弱性等について(注意喚起)
(2022 年 12 月 20 日経済産業省) https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191220013/20191220013.html
クレジットカード決済システムのセキュリティ対策強化検討会 報告書(案) 2023年1月20日

ここ数年、EC-CUBEからShopifyへリプレイスする企業が急増しています。特に中小企業やスタートアップにおいては、初期導入時にオープンソースであるEC-CUBEを選んだものの、運用が進むにつれて保守負担や機能制限に直面するケースが少なくありません。対照的に、ShopifyはSaaS型であることから、インフラ保守が不要で、セキュリティパッチや機能アップデートも自動的に適用される点が高く評価されています。

EC-CUBEとShopifyの概要

【公式】EC-CUBE – 独自のUI/UXを実現しECビジネスを成功に導く

EC-CUBEは、日本発のオープンソースECパッケージで、PHPベースの構築型CMSとして自由度の高いカスタマイズが可能です。一方で、セキュリティや保守運用、拡張対応において事業者側のリソースが大きく求められます。

Shopify Plusプラットフォーム | スケーラブルなコマースソフトウェアとソリューション – Shopify 日本

Shopifyは、カナダ発のクラウド型SaaSプラットフォームで、インフラ保守不要・多通貨対応・豊富なアプリが特徴です。BtoCから越境EC、さらにはBtoBにも対応可能な柔軟性を持ち、国内外で導入事例が増加中です。

EC-CUBEとShopifyの比較表

比較項目EC-CUBEShopify
提供形態オープンソース(構築型)SaaS(クラウド)
カスタマイズ性高い(PHP等による開発が必要)中(アプリ・テーマで拡張)
インフラ・保守自社対応が必要Shopifyが提供・管理
多言語・多通貨対応要プラグイン/独自実装標準機能やMarketsで対応可能
セキュリティ更新自社対応(遅れると脆弱性の懸念)自動アップデート
アプリ連携限定的豊富(Shopify App Store)
初期コスト小さいプランにより変動(14日無料体験あり)
総保有コスト(TCO)運用次第で増大継続費用ありだが保守負担が少ない

EC-CUBEからShopifyへリプレイスした企業

株式会社クラダシ(Kuradashi)の移行事例

おトクな買い物でフードロス・食品ロス削減|Kuradashi(クラダシ)

唯一公式に公開されている事例として、フードロス削減をミッションに掲げるショッピングサイト「Kuradashi」を運営する株式会社クラダシのケースがあります。2022年5月、同社はEC-CUBEからShopify Plusへリプレイスを実施しました。

Kuradashiは、メーカーや卸業者などから賞味期限の近い商品やパッケージ変更品などを買い取り、安価で提供する仕組みを構築しており、その社会貢献性の高さから多くの支持を得てきました。しかし、社会課題解決型ビジネスとして事業成長を図る中で、旧システム(EC-CUBE)ではトラフィック増への対応や施策実行スピードの限界、開発保守コストの増大がボトルネックになっていました。

移行の背景と成果

  • サイトパフォーマンスの安定化を求めてSaaS型のShopify Plusを選定
  • Shopify移行により、サーバーダウンタイムはゼロに、信頼性と安定性を確保
  • ノーコードでのページ改修やアプリ連携により、マーケティング施策数は約2倍に増加
  • 結果として、主要事業の売上は前年比1.4倍に成長

さらに、管理画面の操作性や施策実行までのスピード感が大きく改善され、Shopifyへの移行は事業成長の加速にもつながりました。Kuradashiのような社会貢献性の高い企業にとって、スピーディな意思決定と施策実行の基盤を構築できたことは大きな転換点となっています。

よくある移行(リプレイス)時のトラブルとその対処法

ECサイトのリプレイス(再構築・再移行)は、単なるシステムの切り替えではなく、データ・UX・業務フロー・SEOといった多方面に影響する大規模なプロジェクトです。ここでは、ECにおける一般的なリプレイス時の注意点と対処法を紹介します。

会員情報や注文履歴の移行ミス

パスワードの暗号化方式やデータベースの構造が異なるため、移行時にユーザーの再ログインが必要になる場合があります。事前に周知し、必要に応じて再設定用のメールを一斉送信するなどの配慮が求められます。

URL構造の変更に伴うSEOリスク

URLが変わる場合、検索エンジンに正しく通知しないと検索順位の低下を招きます。旧URLから新URLへの301リダイレクト設定を徹底し、Google Search Consoleの再登録も忘れずに行いましょう。

想定外の機能差異による業務混乱

リプレイス先のプラットフォームが既存の業務要件を満たしていないケースがあります。業務プロセスごとに必要な機能を棚卸し、代替手段の有無やカスタマイズの可能性を事前に検証することが重要です。

UI/UXの変化による顧客の離脱

サイト構成や購入フローが大きく変わると、既存顧客が使いづらさを感じて離脱する可能性があります。リニューアル後はUI/UXの改善を継続的に行い、顧客からのフィードバックを反映していく体制が求められます。

外部ツール連携の再構築

決済サービス、配送システム、MA・CRMツールなどの連携がスムーズに行えない場合、運用に支障が出ます。APIの仕様や連携方法を早期に確認し、必要であればベンダーとの連携支援を依頼しましょう。

Shopify移行前に確認すべきチェックリスト

  • 旧サイトのURL構造とメタ情報を把握し、301リダイレクトを準備
  • 会員データや受注履歴の移行可否と処理手順を明確化
  • Google Analyticsやタグマネージャーなどの解析ツール設定を見直し
  • Shopifyの決済・配送・税制対応を事前に検証
  • 商品情報の一括インポート準備(画像・タグ・在庫含む)
  • 検索順位維持のためのSearch Console再登録

EC-CUBEからの乗り換えで得られるメリット

Shopifyへの乗り換えは、セキュリティ、運用効率、事業成長において多くのメリットをもたらします。ここでは、実際の導入企業の声や実務経験をもとに、その主な利点を整理します。

Shopify導入による主なメリット

  • インフラ管理不要:サーバーやセキュリティパッチの対応が不要で、Shopify側がすべて担保。事業者は本業に専念できます。
  • アプリエコシステムの活用:Shopify App Storeから多様な機能を簡単に追加できるため、スピーディに施策を実行可能。
  • 海外展開にも強い:多言語・多通貨・国別価格設定など、越境ECに求められる機能が標準またはアプリで対応可能。
  • スピーディな運用と改修:コード不要のテーマエディタにより、ノーコードでも柔軟な改修・施策実行が可能。
  • 信頼性とスケーラビリティ:トラフィック急増時でも安定して稼働し、ダウンタイムゼロの運用を実現している事例も多数。

EC-CUBEからShopifyへのメリット比較表

項目Shopify の優位点
セキュリティ対応自動アップデートで脆弱性を常時カバー
保守運用コスト社内リソース不要、インフラ保守は全て不要
拡張性・柔軟性アプリで容易に機能追加、マーケ支援機能も充実
海外対応力標準機能で多通貨・多言語対応
初期構築〜施策実行スピードノーコード編集可、マーケ施策も迅速に反映可能
TCO(総保有コスト)長期的に見ると人件費・開発費削減によりコスト減少

まとめ|EC-CUBEからの移行を成功させるために

EC-CUBEからShopifyへのリプレイスは、単なるプラットフォーム変更ではなく、ネットショップの“基盤の最適化”を意味します。とくにKuradashiのような事例に見るように、Shopifyへの移行によってパフォーマンス、施策実行スピード、運用の柔軟性が飛躍的に向上し、事業成長の土台が強化されることが証明されています。

一方、移行には複雑な要素が多く、データ移行、SEOの維持、業務フローの再設計など、事前の準備と全体設計が成功を左右します。正しい知識を持ち、信頼できるパートナーと連携しながら段階的に進めることが重要です。

Shopifyへの移行に悩んでいる方は、ぜひ一度、自社の課題と未来のEC戦略を照らし合わせながら、検討を進めてみてください。