【2024年最新】電子帳簿保存法の重要ポイントと実践ガイド

近年、企業の経理・税務業務に大きな影響を与えている「電子帳簿保存法」。特に2024年の改正により、請求書や領収書などの電子保存義務化が本格化し、対応が遅れることでリスクを抱える企業も増えています。

単なる「保存方法の変更」にとどまらず、デジタル化による業務効率の向上ペーパーレス経営の推進という観点からも、今や無視できない法制度となっています。しかし、制度の要件は複雑で、「何を、どのように、いつまでに対応すべきか」が分かりづらいという声も多く聞かれます。

本記事では、2024年改正のポイントをはじめ、対象となる書類や保存要件、企業規模・業種別の対応戦略、さらには実務で直面しがちな課題とその解決策まで、実践的な視点からわかりやすく解説します。これから対応を進める企業はもちろん、既に導入済みの企業にとっても、抜け漏れチェックや運用の見直しに役立つ内容です。

1. 電子帳簿保存法とは?改正のポイントを理解しよう

電子帳簿保存法は、企業や個人事業主が取引記録や会計帳簿を電子的に保存する際のルールを定めた法律です。デジタル化が進む現代において、紙の保存から電子保存へと移行するための法的基盤となっています。

2024年の電子帳簿保存法改正のポイント

2024年1月から施行された改正では、最も重要なポイントとして電子取引データの保存が義務化されました。これにより、メールやクラウドサービスで受け取った請求書や領収書などを、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが求められるようになりました。

この改正により、すべての事業者が対応を迫られることになりました。従来は電子化対応を選択制としていましたが、現在は電子取引で受け取ったデータは電子で保存するのが原則です。

なぜ電子保存が必要になったのか?

電子帳簿保存法の改正には、主に3つの背景があります。第一に、業務効率化とペーパーレス化の推進です。紙の書類管理は保管スペースや管理コストがかかり、検索性も低いため、電子データによる効率的な管理を目指しています。第二に、企業間取引でのメールやクラウドサービスの利用が一般的になり、電子取引の増加に対応する必要がありました。第三に、電子データでの保存により、税務調査の際のデータ検証が容易になり、透明性向上と不正防止にもつながります。

2. 電子帳簿保存法の対象となる書類と保存要件

対象となる国税関係帳簿と書類

電子帳簿保存法の対象となる書類は大きく分けて次の3種類です。国税関係帳簿としては仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などがあります。国税関係書類としては請求書、領収書、契約書などが該当します。そして電子取引データとして、メールで受信したPDF請求書、クラウドサービス上の取引記録などが含まれます。

特に注意が必要なのは電子取引データです。メールに添付されたPDF請求書やオンラインバンキングの取引履歴など、電子的に受け取った取引記録は、すべて電子保存の対象となります。

電子保存の主な要件

電子帳簿保存法に対応するためには、以下の保存要件を満たす必要があります。

要件区分具体的な内容
検索機能・取引年月日、金額、取引先による検索
・日付範囲指定による絞り込み
・複数条件での組み合わせ検索
真実性担保・タイムスタンプの付与
・訂正・削除履歴の保存
・事務処理規程の整備
可視性確保・税務調査時の速やかな出力
・データの可読性確保
・必要に応じた印刷対応

まず検索機能の確保が求められます。取引年月日、取引金額、取引先で検索できる機能や、日付範囲指定による絞り込み機能、2つ以上の項目での組み合わせ検索機能が必要です。

次に真実性の担保として改ざん防止措置が必要です。タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の確保、改ざん防止のための事務処理規程の整備などが求められます。

さらに可視性の確保として、税務調査の際に電子データを画面・書面で速やかに出力できることや、データの可読性を確保することが重要です。

3. 企業規模別の電子帳簿保存法対応戦略

以下に、「3. 企業規模別の電子帳簿保存法対応戦略」の内容を表形式で整理しました。企業規模ごとの推奨対応策と、それによる主なメリットが一目でわかるようになっています。

企業規模推奨対応策主なメリット
中小企業・クラウド会計ソフトの導入
・シンプルな事務処理規程
・段階的な電子化推進
・初期投資を抑えられる
・短期間で導入可能
・専門知識が少なくても対応可能
大企業・基幹システムとの連携
・自社サーバー/プライベートクラウド
・詳細な規程整備と全社教育
・全社データの一元管理
・高いセキュリティ確保
・業務プロセス全体の最適化

中小企業向け対応策

中小企業が電子帳簿保存法に対応するには、クラウド型のサービスを活用するのが最も効率的です。クラウド会計ソフトの導入により、電子取引データの自動保存機能を活用できます。またシンプルな事務処理規程を作成し、社内で共有することも重要です。

実例として、東京の小売業A社(従業員15名)は、マネーフォワードクラウドを導入し、メールで受け取る請求書を自動で取り込む設定にしました。これにより、紙での管理が不要になり、経理業務の時間が約40%削減されました。

大企業向け対応策

大企業の場合は、より高度なシステム構築が必要になります。基幹システムと連携した電子帳簿保存システムの構築や、自社サーバーまたはプライベートクラウドでの管理、詳細な事務処理規程の整備と社内研修の実施などが求められます。

実例として、製造業B社(従業員500名)は、自社の基幹システムと連携する形で電子帳簿保存システムを構築しました。全国の拠点で発生する取引データを一元管理し、税務調査時のデータ提出がスムーズになりました。

4. 業種別の電子帳簿保存法対応ポイント

製造業の対応ポイント

製造業では、紙の納品書や検収書が多いため、スキャナ保存の仕組みづくりが重要です。取引先との間でPDF請求書の送受信ルールを確立することや、紙で受け取る書類のスキャナ保存体制の整備、工場と本社間のデータ共有体制の構築などがポイントとなります。

小売・サービス業の対応ポイント

小売・サービス業では、多数の領収書や売上データの管理が課題です。POSシステムと会計ソフトの連携や、クレジットカード決済データの電子保存、店舗ごとのデータ管理の標準化などが重要になります。

IT・Web業界の対応ポイント

IT業界では、すでに電子的なやり取りが主流のため、データの整理と管理が重要です。クラウドサービス上の契約書・請求書の体系的な管理や、電子契約サービスの活用、プロジェクト管理ツールと会計データの連携などがポイントとなります。

業種課題対応ポイント
製造業紙の納品書・検収書が多い・PDF請求書の送受信ルール確立
・スキャナ保存体制の整備
・工場-本社間のデータ共有
小売・サービス業多数の領収書・売上データ・POSシステムと会計ソフト連携
・決済データの電子保存
・店舗データの標準化
IT・Web業界多様な電子契約・取引・クラウド上の文書管理強化
・電子契約サービス活用
・プロジェクト管理との連携

5. 電子帳簿保存法対応のための具体的な実践ステップ

現状分析と対応計画の作成

まずは自社の現状を把握するところから始めましょう。電子取引の棚卸しを行い、どのような電子取引があるか、どのようなデータをどう保存しているかをリストアップします。次にギャップ分析として現状と法令要件の差を明確化します。そして対応計画の策定を行い、システム導入や運用ルール整備のスケジュールを作成します。

システム・ツールの選定と導入

自社の規模や業種に適したシステムを選びましょう。まず要件定義として、検索機能、改ざん防止措置など、必要な機能を明確化します。次にツール選定を行い、クラウド会計ソフト、文書管理システムなどから最適なものを選択します。そしてテスト運用として、小規模な範囲から試験的に導入し、問題点を洗い出します。

事務処理規程の整備

電子保存の運用ルールを明確化する事務処理規程を作成します。電子取引データの保存方法と保存期間、データ保存の責任者と作業担当者、バックアップの方法と頻度、タイムスタンプの付与タイミングと方法、訂正・削除の手続きとログの残し方などを含めるようにしましょう。

事務処理規程のサンプル例としては、「第1条(目的)本規程は、電子帳簿保存法に基づき、当社における電子取引データの適正な保存と管理を行うために必要な事項を定める。第2条(対象となる電子取引データ)本規程の対象となる電子取引データは以下のとおりとする。(1) 電子メールにより受信した請求書、納品書、領収書等のPDFファイル、(2) クラウドサービス上で授受する契約書、発注書等のデータ、(3) オンラインバンキングの取引履歴データ…」などが挙げられます。

社内教育と運用体制の整備

システム導入だけでなく、社員教育も重要です。説明会の実施として、電子帳簿保存法の概要と社内対応について全社員に説明します。マニュアルの整備では、システムの使い方や電子取引データの保存方法を解説します。定期監査の実施として、保存状況を定期的にチェックする仕組みを構築します。

対応ステップ実施内容期間目安
現状分析・電子取引データの洗い出し
・現状の保存方法確認
・法令要件とのギャップ分析
1〜2か月
システム選定・導入・必要機能の明確化
・製品比較と選定
・テスト運用と問題点改善
2〜3か月
事務処理規程整備・保存方法・責任者の明確化
・運用手順の文書化
・社内承認プロセス
1か月
社内教育・運用開始・説明会実施
・マニュアル整備
・定期的な運用状況確認
1〜2か月

6. 電子帳簿保存法対応のよくある課題と解決策

「タイムスタンプが複雑で手間がかかる」

タイムスタンプが複雑で手間がかかるという課題に対しては、クラウド会計ソフトなど、自動でタイムスタンプを付与するシステムを活用したり、一定期間分をまとめてタイムスタンプ付与する方法を検討するという解決策があります。

「取引先が紙の請求書しか発行してくれない」

取引先が紙の請求書しか発行してくれないという課題に対しては、取引先にPDF請求書への切り替えを依頼したり、スキャナ保存制度を活用し、要件を満たした形で電子化するという解決策があります。

「システム導入コストが負担になる」

システム導入コストが負担になるという課題に対しては、無料プランのあるクラウドサービスからスタートしたり、IT導入補助金など、政府の支援制度を活用するという解決策があります。

課題解決策検討ポイント
タイムスタンプの複雑さ・自動付与システムの活用
・一括付与の検討
導入コストと運用負荷のバランス
紙の請求書対応・取引先へのPDF切替依頼
・スキャナ保存の活用
スキャナ保存の要件への対応可否
システム導入コスト・無料/低価格プランの活用
・補助金の活用
将来的な拡張性と初期コスト

まとめ:電子帳簿保存法をビジネス改善のチャンスに

電子帳簿保存法の対応は単なる法令遵守だけでなく、業務効率化のチャンスでもあります。紙の書類管理からの脱却は、業務効率の向上、保管コストの削減、経営の可視化などのメリットをもたらします。

業務効率の向上としては、書類の検索時間短縮やリモートワーク対応が挙げられます。保管コストの削減としては、紙の保管スペース・管理コストが削減されます。経営の可視化としては、データの分析活用による経営判断の迅速化が期待できます。

電子帳簿保存法への対応は、一見すると負担に感じるかもしれませんが、適切なシステム選定と運用ルール整備により、長期的には大きなメリットをもたらします。まずは自社の現状分析から始め、計画的に対応を進めていきましょう。

デジタル化の波は今後も続きます。電子帳簿保存法への対応を機に、企業全体のデジタルトランスフォーメーションを進める第一歩としてポジティブに捉えることが重要です。