BtoB(企業間取引)におけるデジタル化の波は、もはや「選択肢」ではなく「必須課題」となりつつあります。しかし、導入を検討する中で多くの経営者・担当者が抱くのが「うちの業界・商材でEC化は可能なのか?」「導入して本当に使ってもらえるのか?」という不安です。
結論から言えば、BtoB ECには確かに「向き・不向き」の業界特性が存在します。しかし、2026年現在、テクノロジーの進化により「導入できない業界はない」と言えるほど活用方法は多様化しています。
本記事では、経済産業省の最新市場調査データ(2025年発表)を紐解きながら、BtoB ECに向いている業界の特徴と、導入難易度が高い業界の攻略法について解説します。
【この記事でわかること】
- データに基づく「EC化に向いている業界」と「導入が難しい業界」の特徴
- 建設業やオーダーメイド品など、導入ハードルが高い業界が抱える「3つの壁」
- 不向きな業界でも成果を出すための「ハイブリッドEC戦略」と具体的解決策
BtoB ECとは?急拡大する市場背景と「導入が進む」業界の真実
BtoB EC市場の急拡大とは、企業間取引のデジタル化が急速に進んでいる現状のことです。例えば、2024年の市場規模は500兆円を超え、全商取引の4割以上がすでにシステム経由で行われています。人手不足やインボイス対応といった背景もあり、もはや「導入するかどうか」ではなく「いつ導入するか」が問われる段階に来ています。

まずは、なぜ今これほどまでにBtoB ECが注目されているのか、市場の現状を決定的な数字で見ていきましょう。
経済産業省が2025年8月に発表した最新の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の日本国内におけるBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、514兆4,069億円(前年比10.6%増)という過去最高額に達しました。
特筆すべきは「EC化率(全商取引に占める電子商取引の割合)」の高さです。
BtoB全体のEC化率は43.1%を記録しました。これは、日本の企業間取引の4割以上が、すでに電話やFAXといったアナログ手段ではなく、EDIやECサイトなどのシステム経由で行われていることを証明しています。
この背景には、以下の3つの社会的要請があります。
- 労働力不足の深刻化(2024年問題、人手不足倒産の増加)
- 法対応の義務化(インボイス制度、電子帳簿保存法への完全対応)
- 業務プロセスのデジタル化(レガシーシステムからの脱却と効率化)
もはやBtoB ECは「導入すれば便利」なツールではなく、企業活動を維持するための「インフラ」となりつつあります。
【データで解説】BtoB EC化率が高い=導入に「向いている」業界の実態
EC導入に向いている業界の特徴とは、デジタルでの注文処理と商材の特性がマッチしていることです。例えば、商品スペックが明確で、対面での説明がなくても購入判断ができる商材を扱う業界では、導入効果が即座に現れやすい傾向にあります。
では、具体的にどのような業界でEC化が進んでいるのでしょうか。
「向いている特徴」を語る前に、経済産業省のデータによる「業種別EC化率」の傾向を見ることで、その答えが明確になります。
最新調査において、平均(43.1%)を大きく上回り、60%〜70%超という極めて高いEC化率を記録している主要産業は以下の通りです。

| 順位 | 業種 | EC化率の目安 | 特徴・背景 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 輸送用機械 | 70%台後半 |
自動車部品など。 JIT(ジャストインタイム)納品など、強固なサプライチェーン管理が必須であるため。 |
| 2位 | 食品 | 70%前後 |
スーパー・コンビニ等の受発注。 商品点数が多く、発注頻度が極めて高いためシステム化が不可不可欠。 |
| 3位 | 電気・情報関連機器 | 60%台後半 |
家電・PC部品など。 規格が統一されており、型番での特定が容易なためECと相性が良い。 |
これら上位の業界データを分析すると、自社商材がECに向いているかの判断基準が見えてきます。
1. 「型番」で商品が特定できる(規格化されている)
素材、部品、既製品など、スペックが明確で「現物を見なくても発注できる」商材は、EC化によるコスト削減効果が最大化します。
2. 取引頻度が高く、リピート注文が多い
食品業界や卸売業のように、毎日・毎週決まった商品を補充する業務(ルート営業的な受注)は、ECサイトに置き換えることで営業担当者の工数を劇的に削減できます。
3. サプライチェーン全体のスピードが求められる
自動車産業のように、発注から納品までのリードタイム短縮が経営課題となっている業界では、FAXや電話のタイムラグは許されず、必然的にシステム取引(EC)が標準となります。
貴社の商材がこれら3つの条件のいずれかに当てはまる場合、BtoB ECの導入は「業務効率化」だけでなく、「競合他社に遅れを取らないための必須条件」と言えるでしょう。
1. 標準化・規格化された商品を扱う(製造業・卸売業)
標準化・規格化された商品とは、型番や品番だけで商品が特定できる商材のことです。例えば、製造業の部品や電子機器などは、現物を確認しなくても型番さえ分かれば発注できるため、検索性に優れたECサイトとの相性が抜群です。
「型番」さえ分かれば商品が特定でき、現物確認が不要な商材はECに最適です。
【EC化率が高い業種(経産省データより)】
- 輸送用機械器具製造業:88.6%
- 電気・情報通信機器:76.6%
これらの業界では、膨大な部品点数を管理する必要があり、紙のカタログよりも検索性に優れた「Webカタログ兼発注サイト」としてのECが高い利便性を発揮します。
2. 反復購買(リピート注文)が多い業界
反復購買が多い業界とは、特定の決まった商品を定期的に発注する商習慣がある業界のことです。例えば、食品原材料や工場の消耗品、オフィス用品などは、「いつものやつ」を履歴から再注文できるECの利便性が、顧客にとっても大きなメリットとなります。
【食品製造業のEC化率:81.3%】 毎回電話で「いつものやつ」と注文するよりも、ECサイトの購入履歴から「再注文」ボタンを押す方が、買い手にとっても圧倒的に楽になります。この「買い手の業務削減」こそが、BtoB EC定着の鍵です。
3. 情報の非対称性が少ない(スペック比較が容易)
情報の非対称性が少ないとは、売り手と買い手の間で商品知識の差が少なく、仕様書(スペック表)だけで良し悪しが判断できる状態のことです。例えば、PC周辺機器や工具などは、営業担当者が逐一説明しなくても顧客自身で比較検討できるため、EC化による省人化効果が高くなります。
BtoB EC導入が「難しい」とされる業界と3つの壁
EC導入が難しいとされる業界とは、既存の一般的なECパッケージでは対応しきれない特殊な商習慣を持つ業界のことです。例えば、毎回仕様のすり合わせが必要なオーダーメイド品や、取引先ごとに価格が異なる複雑な商流を持つ場合、導入には工夫が必要です。
1. 高度なカスタマイズ・オーダーメイドが必要
特注の金型や、顧客の要望に合わせて設計する大型設備などは、カートに入れるような単純な売り方ができません。 仕様のすり合わせ(打ち合わせ)が必須となるため、ECサイト上で完結させることが困難です。
2. 複雑な商流・個別の取引条件が存在する
特に建設・建築資材業界などで見られるのが、以下のような複雑な商習慣です。
- 取引先A社とB社で「掛率(仕入れ値)」が違う
- 現場単位で納品先が変わる
- 一度に大量注文する場合のみ値引きが発生する
こうした条件をシステムに落とし込むハードルが高いため、建設業のEC化率は18.3%と、他業種に比べて低留まっています。
3. 専門的なコンサルティング販売が必須
医療機器や高度な化学薬品など、専門知識を持った担当者による提案や、法規制への対応が必要な商材も、ECだけで販売するのはリスクが高いとされています。
【解決策】「不向き」な業界こそチャンス?ハイブリッドEC戦略
では、上記のような「難しい業界」はECを諦めるべきでしょうか? 答えはNOです。 むしろ、競合他社が二の足を踏んでいる今こそ、ハイブリッドEC戦略で差をつけるチャンスです。
ハイブリッドEC戦略とは、すべての業務をデジタル化するのではなく、人とシステムの得意分野を使い分ける手法のことです。例えば、複雑な新規案件は従来通り営業担当者が対応し、手間のかかるリピート注文だけをEC化するなど、部分的な導入でも大きな効果が得られます。
戦略1:業務の切り分け(「リピート品」のみEC化)

全ての商品をECで売る必要はありません。
- 新規提案・特注品 → 従来どおり営業担当者が対面・電話で対応
- 消耗品・リピート品 → ECサイトで24時間自動受付
このように切り分けることで、営業担当者は「ルーチンな受注入力作業」から解放され、本来注力すべき提案業務に集中できるようになります(営業DX)。
| EC化しやすい業界・商材 | EC化の難易度が高い業界・商材 |
|---|---|
|
✔ 型番商品・既製品 (輸送用機械、電子部品、PC周辺機器) |
▲ オーダーメイド・特注品 (金型、大型設備、受託製造) |
|
✔ リピート発注(消耗品) (食品原料、オフィス用品、工場副資材) |
▲ 複雑な商習慣がある (現場毎の納品先変更、都度見積もり) |
| ★戦略:Webカタログ・自動受注 | ★戦略:ハイブリッド運用・Web-EDI |
戦略2:見積もり機能の活用(Web-EDI化)
価格が決まっていない商品については、ECサイト上で「購入」させるのではなく、「見積依頼」機能を使わせるのが有効です。 顧客はカートに見積もりたい商品を入れ、依頼を送信。それに対して管理側が価格を回答し、顧客が承認すれば発注となるフローです。これにより、電話での「言った言わない」のトラブルを防ぎ、履歴をデジタルデータとして残すことができます。
戦略3:顧客専用サイト(クローズドBtoB)の構築
BtoB専用のECカートシステムを選べば、「ログインした顧客ごとに異なる価格を表示する」ことが可能です。 一般には公開せず、既存顧客だけが使える受発注システム(Web-EDI)として構築することで、複雑な商習慣を維持したままデジタル化を実現できます。
まとめ:自社の「業界特性」に合ったECシステムを選ぼう
まとめとして、BtoB EC導入成功の鍵は、自社の業界特性に合わせたシステム選定にあります。例えば、複雑な商流があるならBtoB特化型の機能を備えたシステムを選ぶなど、自社の業務フローにフィットするツールを選ぶことが、プロジェクトを成功へ導く第一歩です。
2026年現在、BtoB EC市場は500兆円を超え、もはやどの業界にとっても無関係ではありません。
・向いている業界
(製造・卸売・リピート商材): 競合に先んじて高機能なECを導入し、顧客の囲い込みを急ぐべきです。
・難しいとされる業界
「全てを自動化」しようとせず、リピート注文や見積もり業務だけをデジタル化する「ハイブリッド運用」が成功の鍵です。
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