昨今のビジネス環境において、BtoB市場でもEC化の波が急速に広がっています。コロナ禍を契機に、従来の対面営業を中心としたビジネスモデルは大きく変化しました。いつの間にか競合企業はEC化を進め、デジタル時代の新たなビジネス環境に適応しているかもしれません。
本稿では、BtoB企業がEC化で出遅れないための実践的な方策を解説します。
「EC化に向かない業界」は存在するのか
「特殊な業界だから」「商品が複雑すぎるから」「顧客は従来の方法を好むから」
こうした声はよく聞かれますが、実際にはどの業界においてもEC化の波は着実に進行しています。
- 工業用部品メーカー:カタログ製品のオンライン注文システム導入
- 業務用食材卸:飲食店向けの24時間発注サイト構築
- 建材商社:在庫確認から見積、発注までのデジタル化
実は「複雑だから」「特殊だから」こそ、EC化によって得られるメリットが大きい業界も少なくありません。
競合のEC化がもたらす三つの現実的課題

1. 「利便性」による顧客選別の加速
競合他社がEC化を進める中、顧客は「取引しやすい会社」と「取引の手間がかかる会社」を明確に区別し始めています。特に若手のバイヤーを中心に、24時間いつでも発注でき、在庫状況もリアルタイムで確認できる企業が選ばれる傾向が強まっています。
人手不足が深刻化する現在、取引先企業も業務効率化の観点から「手間のかからない取引先」を優先する流れは今後も強まるでしょう。
2. 「データ資産」格差の拡大
EC化した企業は日々、顧客の購買行動に関する貴重なデータを蓄積しています。「どの商品がいつ、どのような条件で売れるか」「どのような提案が効果的か」といった情報を数値化し、戦略に活用できる企業と、依然として経験則に頼る企業との差は、時間の経過とともに拡大する一方です。
3. コスト競争力の低下
受注処理、伝票入力、在庫確認といった業務をシステム化できれば、人件費削減だけでなく、ヒューマンエラーも減少します。EC化した競合他社が着実にコスト構造を改善する一方で、従来型のオペレーションを続ける企業は、気付かないうちにコスト競争で不利な立場に追い込まれる可能性があります。
段階的アプローチによるEC化の実践
一気にすべての業務をEC化するのは現実的ではありません。むしろ段階的に進めることで、リスクを抑えながら確実に前進することが重要です。
フェーズ1:情報のデジタル化(1〜3ヶ月)
- 商品カタログのPDF化とウェブサイトでの公開
- メールやウェブフォームによる問い合わせ対応の整備
- よくある質問(FAQ)のウェブサイト掲載
これだけでも「デジタル対応を進めている企業」という印象を与えることができます。
フェーズ2:基本的なオンライン注文機能の導入(3〜6ヶ月)
- 定番商品を中心としたオンライン注文フォームの設置
- 見積依頼のオンライン化
- 在庫状況の可視化
初期段階では顧客の「試しに使ってみる」という心理的ハードルを下げることが重要です。
フェーズ3:本格的ECプラットフォームの構築(6ヶ月〜1年)
- 顧客ごとの価格設定機能
- 企業内承認フロー対応(申請者→上長→購買部門など)
- 注文履歴の管理と再注文機能
- 関連商品のレコメンド機能
実践から学ぶ成功のポイント

事例1:「スモールスタート」戦略を採用した建材メーカー
複雑な商品構成を持つ建材メーカーA社は、まず標準化された基本商品のみをEC化することから始めました。「基本的な商品なら自社で発注できる」という顧客ニーズに応えることで、徐々に信頼を獲得。段階的に取扱商品を拡大し、現在では売上の40%がオンライン経由となっています。

事例2:「役割の明確化」で成功した専門商社
カスタマイズ対応の多い専門商社B社は、「標準品はEC、特注品は営業担当者」と役割分担を明確にしたハイブリッド型のビジネスモデルを構築。顧客も用途に応じた使い分けを理解し、結果として営業担当者はより複雑で付加価値の高い案件に集中できるようになり、全体の生産性が向上しました。
実行に移すための具体的ステップ
EC化は完璧なシステムを目指すあまり、取り組み自体が先送りになる傾向があります。しかし重要なのは、まず小さく始めて、継続的に改善していくことです。
完璧を求めず、実行可能な範囲から着手することが、EC化成功の鍵となります。顧客から寄せられる「利便性が向上した」という評価が、次のステップへの推進力となるでしょう。
BtoB市場のEC化は今後も加速します。今からでも、計画的かつ段階的なアプローチで、この潮流に乗り遅れないようにしましょう。
まとめ:BtoB市場におけるEC化の加速と実践的アプローチ
近年、BtoB市場でもEC化の波が急速に進行しています。コロナ禍をきっかけに非対面での取引ニーズが高まり、従来の営業モデルからの転換が求められています。
「業界が特殊だから」といった理由でEC化を敬遠する企業もありますが、実際にはあらゆる業種で導入が進み、競争優位の鍵となっています。
こうした状況に対応するためには、段階的なアプローチでEC化を進めることが有効です。情報のデジタル化から始め、オンライン注文機能の導入、本格的なECプラットフォーム構築へとフェーズを分けることで、無理なく推進が可能です。
さらに、EC化は営業部門の役割を奪うのではなく、営業担当者が付加価値の高い業務に集中できる環境を整える手段にもなります。
実際の成功事例では、スモールスタートや役割分担によって、売上増加と生産性向上を同時に実現しています。
最後に、重要なのは「完璧を目指すより、小さく始めて改善を重ねること」。まずは行動を起こし、顧客の声を聞きながら進めることが成功のカギです。