BtoB ECサイトの市場が拡大傾向にある一方で、BtoB ECサイトの種類について深く知らない方も多くいるのではないかと思い、今回BtoB ECサイトにおけるクローズドサイトとはどういった形態なのかご紹介いたします。
クローズドサイトとは?活用の具体例について

クローズドサイトとは、BtoB ECサイトの公開範囲を限定したサイトのことで、あらかじめ会員登録やログインを行ったユーザーだけが、商品情報や価格、在庫状況などを閲覧・発注できる仕組みです。
一般公開されているECサイトとは異なり、限られた取引先のみに情報を見せることができるため、「会員制の専用サイト」と認識していただければと思います。また構築方法によっては、サイトのURLそのものを非公開にしたり、アクセスできるユーザーを限定したりと、高いレベルでの情報管理やセキュリティ対策も可能です。
クローズドサイトを導入検討される企業様としては、下記のような理由で検討されることが多いです。
- 競合他社には知られたくない在庫状況や価格を、限られた取引先にだけ公開したい専門商社様
- 販売パートナーや代理店向けに、特別な条件で商品を提供したいメーカー様
- 社員向けの備品発注や間接材管理など、社内専用のECサイトとして活用したい企業様
商品情報の公開範囲をしっかりとコントロールできる点から、業界特化型の取引や社内の業務効率化を目的としたBtoB ECでは、クローズド型サイトの仕組みを検討されることがあります。
オープンサイト・セミクローズドサイトとの違いを比較
クローズドサイトは、既存取引先や社内ユーザーに限定して利用されることが多く、目的は購買担当者の業務効率化にあります。これに対し、オープン型およびセミクローズド型のサイトは、公開範囲を広く設計できるため、検索エンジン経由の集客や新規販路の拡大を狙って構築される点が大きな違いです。
下記にクローズドサイト・セミクローズドサイト・オープンサイトの比較表を作成しました。
クローズドサイト | セミクローズドサイト | オープンサイト | |
会員登録方法 | △特定のユーザーのみ | △ユーザー承認あり | ◯ |
商品画像 | ✕ | ◯ | ◯ |
商品詳細説明文 | ✕ | ◯ | ◯ |
販売価格 | ✕ | △ 一部商品のみ公開も可能 | ◯ |
卸売価格 | ✕ | △ 一部商品のみ公開も可能 | ◯ |
購入の可否 | ✕ | ✕ 会員登録後 | ◯ |
商品一覧 | ✕ | ◯ | ◯ |
承認ワークフロー | ◯ 使用するシステムによる | ◯ 使用するシステムによる | ◯ |
カタログの閲覧 | △ 掲載場所がEC外であれば可能 | ◯ | ◯ |
CADデータの閲覧 | △ 掲載場所がEC外であれば可能 | △ 掲載場所による | ◯ |
商品紹介資料 | △ 掲載場所がEC外であれば可能 | ◯ | ◯ |
クローズドサイトの主な特徴とメリット
受注業務の効率化と顧客対応に強いクローズドサイトの活用

クローズドサイトを導入する企業の多くは、「受注業務の効率化」を主な目的としています。クローズドサイトでは、会員登録を行った取引先のみが商品情報を閲覧できる仕組みであるため、既存顧客との取引をスムーズに進めるためのツールとして活用されるケースが一般的です。
また、新規顧客に対しては、サイトへのアクセスが制限されている場合が多く、閲覧には事前の問い合わせや営業担当とのやり取りが必要となります。
価格・商品情報の非公開で競合差別化を実現
クローズドサイトでは、会員登録や取引先認証を経たユーザーのみが商品情報や価格を閲覧できる設計となっており、自社にとって重要な顧客との取引情報を外部に公開することなく運用することが可能です。
これにより、卸価格や掛率といった取引条件を企業ごとに個別設定しながらも、それを競合に知られることなく提示できるため、柔軟な営業戦略の展開が実現します。とくに、得意先の業種や購買実績に応じた価格体系を採用している企業にとっては、不公平感を生むことなく商談を進められる点が大きなメリットです。
また、オープンサイトと異なり、価格競争に巻き込まれにくいため、サービスや付加価値で差別化を図る企業にとって有利な環境を構築できます。
クローズドサイトの導入で注意すべきポイント
クローズドサイトは、既存顧客との取引をスムーズに進めたり、取引先ごとの価格設定を柔軟に行えたりと、業務効率化に非常に有効な仕組みです。一方で、新規顧客の獲得という観点では、やや工夫が求められるケースもあります。
その理由の一つが、商品情報や価格が非公開であることから、検索エンジン経由での流入やWeb広告からの直接的な問い合わせにつながりにくいという点です。
特にBtoB分野では、多くの企業が商品選定の初期段階でWeb検索や比較サイトを活用しています。そのため、オープンサイトや一部情報を公開しているセミクローズドサイトに比べると、クローズドサイトは検索段階での接点が生まれにくく、自社のサービスが「候補として認識されにくい」可能性があります。
こうした特性を踏まえ、資料請求や問い合わせへの導線設計、情報発信コンテンツとの連携など、マーケティング施策とあわせたサイト運用がより重要になります。
クローズドサイト構築におすすめのBtoB ECプラットフォーム
ecbeing BtoB:大手向け多機能型、柔軟な条件設定

「ecbeing BtoB」は、株式会社ecbeingが提供するBtoB専用のEC構築プラットフォームです。もともとBtoC領域で国内トップクラスの実績を誇るecbeingのノウハウを活かし、法人取引向けに最適化された高機能なシステムとして展開されています。企業ごとに異なる価格・掛率・商品表示などの設定が可能で、承認ワークフローや帳票出力などの法人向け業務機能も充実しています。クローズドサイトとしての構築にも対応しており、ログイン制御を前提としたセキュアな環境下でのBtoB取引を実現できます。大手メーカーや商社など、業務要件が複雑な企業にも多く導入されています。
Aladdin EC:商習慣にフィットする企業別対応機能

株式会社アイルが開発・提供する「Aladdin EC」は、同社の主力製品である販売・在庫管理システム「アラジンオフィス」との親和性が高く、業務と一体化したBtoB ECサイトを構築できるのが特徴です。特に受注から出荷までの業務プロセスに強く、企業ごとに異なる掛率設定や出荷条件、支払条件の管理に対応しています。クローズドサイトとしての構築にも適しており、会員ログインを前提とした運用や、得意先別の商品表示・価格表示が可能です。製造業や卸売業など、既存取引先との関係性を重視する業態に広く利用されています。
TS-BASE受発注:クローズドサイトに対応

竹田印刷株式会社が提供する「TS-BASE 受発注」は、倉庫管理システムもサポートしている特徴的な受注管理システムです。1つのプラットフォーム内で、注文サイト、管理システム、倉庫管理システムと3つのサイトを活用することができ、受注から出荷指示までワンストップで対応可能です。基本的にクローズドサイトとして注文サイトの構築を実施しているため、ぜひクローズドサイトかつ倉庫管理システムと合わせて導入したい企業におすすめのシステムです。
CO-NECT:受発注特化、簡易なスタートアップにも最適

「CO-NECT(コネクト)」は、コネクト株式会社が提供する受発注業務に特化したSaaS型のサービスです。スマートフォンやタブレットからも簡単に利用できるため、現場や営業先でも受発注操作が可能で、アナログな注文業務を効率化したい企業に適しています。クローズドサイト的な運用にも対応しており、取引先ごとに専用の注文ページを作成し、個別に価格や商品を制御することができます。システム導入が初めての企業でも扱いやすく、シンプルかつ現場目線のUIが特長です。営業支援ツールとしても活用されています。
Bカート:小規模事業者向けクラウド型EC

株式会社Daiが提供する「Bカート」は、BtoB取引に必要な機能をあらかじめ備えたクラウド型のECカートです。短期間での導入が可能で、月額制のサブスクリプションモデルでコストも抑えやすく、中小企業からの支持も厚いサービスです。もともと会員ログインを前提とした設計で、取引先ごとの価格、支払条件、注文単位などを細かく制御できるため、クローズドサイトの構築に最適です。商品非公開や一部公開設定にも対応しており、既存取引先とのスムーズな受注運用を実現します。製造業や卸売業を中心に、幅広い業種で採用されています。
Shopify Plus:クローズドサイト対応可能

カナダ発のShopify Inc.が展開する「Shopify」は、世界中で広く利用されているECプラットフォームで、近年では法人向け機能を強化した「Shopify B2B」も提供されています。Shopify Plusを利用することで、BtoBに特化した機能拡張が可能となり、顧客ごとのログイン制御、専用カタログの表示、掛率・支払条件の設定など、クローズドサイトとしての構築にも対応できます。アプリやLiquidを活用したカスタマイズ性が高く、越境ECやチャネル統合との併用にも優れています。グローバル展開を視野に入れた企業や、D2CとBtoBを並行運用したい企業に選ばれています。
まとめ|クローズドサイトで本当にいいのか?選定は慎重に進めたい
ここまで、BtoB ECにおけるクローズドサイトの特徴やメリット、導入時の注意点、さらには主要なシステムの比較までをご紹介してきました。クローズドサイトは、既存顧客との取引効率化や、競合に価格情報を見せない戦略的な活用ができるなど、非常に魅力的な選択肢である一方で、「新規顧客の獲得がしづらくなる」「マーケティング導線をどう確保するか」などの課題も浮かび上がってきます。
また、各システムにはそれぞれ異なる強みや対応範囲があり、例えばecbeing BtoBのように多機能で大規模な構築に向いたものもあれば、CO-NECTのように小規模でスピーディな立ち上げに適したシステムもあります。どのシステムが「良い」のかは、企業の業態、営業体制、既存の業務フロー、さらには将来的な販路拡大の構想などによって大きく変わってきます。導入後のリプレイスコストを考えて、適切なシステムの導入ができるとよいでしょう。
当社では、国内外数十社のBtoB EC・受発注管理システムの企業とパートナー提携をしており、貴社の業務フローを整理した後に最適なシステムを選定することをお手伝いさせていただいております。ぜひ、お気軽にご相談ください。