BtoB企業においてECサイト(Web受発注システム)の導入検討が進む中、現場から必ずと言っていいほど上がるのが、「ECを導入すると、営業担当者は不要になるのではないか?」という懸念の声です。
しかし、結論から申し上げます。BtoB ECは営業を排除するものではなく、営業を「単純作業」から解放し、本来あるべき「戦略的活動」へと進化させるための最強の武器です。
本記事では、BtoB EC導入によって営業担当者の役割が具体的にどう変化するのか、そして変化を恐れず成果を出すための組織再編のポイントについて、専門的な視点から解説します。
【この記事でわかること】
- BtoB EC導入によって「営業担当者は不要になる」という誤解と、その真実
- 「御用聞き営業」から脱却し、高付加価値な「提案型営業(コンサルタント)」へシフトする方法
- 営業部門とデジタル(EC)部門が対立しないための、組織づくりと評価制度(KPI)の見直し
- デジタルと人を融合させた「ハイブリッド営業」の成功事例と具体的な成果
BtoB EC導入で「営業は不要になる」のか?(誤解と真実)
「営業不要論」の誤解とは、BtoB ECが営業担当者の仕事をすべて奪うという極端な認識のことです。 確かに、FAXの入力作業や在庫確認といった「事務作業」はシステムに代替されますが、信頼関係の構築や複雑な課題解決といった「本来の営業活動」は、依然として人にしかできません。むしろ、EC化によって事務作業から解放されることで、営業担当者の重要性は高まると言えます。
1. 従来型営業モデルの限界と「営業DX」の必要性
EC導入前の従来のBtoB営業モデルでは、担当者の貴重なリソースの多くが「守りの業務」に消費されていました。
事務作業に圧迫される営業現場

一般的なBtoB営業担当者の業務時間内訳を見ると、以下のような非効率な実態が浮かび上がります。
- 受発注業務: FAXや電話注文の聞き取り、基幹システムへの手入力
- 在庫・納期回答: 顧客からの電話問い合わせに対する都度の確認・折り返し
- 見積作成: 定型的な製品の価格算出と書類作成
ある調査によれば、営業担当者が本来の「顧客への提案・商談」に使えている時間は、全業務時間の約25%程度に過ぎないと言われています。残りの75%は、移動時間や社内事務、そして上記のような受発注処理に消えているのです。
この「時間の壁」を取り払い、営業リソースを付加価値の高い業務へシフトさせることこそが、BtoB EC導入による営業DXの真の目的です。
2. 「御用聞き」からの脱却:EC時代に求められる5つの新役割
役割の変化とは、単に注文を聞いて回る「御用聞き営業」から、顧客のビジネス課題を解決する「提案型営業(コンサルタント)」へとシフトすることです。
例えば、これまでは在庫の有無や納期回答に追われていた時間を、新商品の提案や顧客の売上アップ施策の立案に充てることで、顧客にとってなくてはならないパートナーへと進化することができます。

① データ活用型コンサルタント
「勘と経験」頼みの営業から脱却します。ECサイト上の顧客行動データ(検索キーワード、閲覧履歴、カート落ち商品など)を分析することで、顧客の潜在的なニーズや課題を先回りして察知。「最近この部材をよく見られていますね。こちらの新製品の方がコストダウンにつながりますよ」といった、根拠に基づいた提案が可能になります。
② ハイタッチ・ソリューションの提供者
型番商品はECでの自動発注に任せ、営業担当者は人間にしかできない複雑な課題解決に注力します。
- 特注品やカスタマイズの仕様検討
- 大型プロジェクトの全体提案
- 経営層へのアプローチ
このように、難易度が高く利益率も高い案件にリソースを集中させることで、一人当たりの生産性は飛躍的に向上します。
③ インサイドセールスとの連携ハブ
EC導入とセットで検討すべきなのが、インサイドセールス(内勤営業)の強化です。フィールドセールス(外勤営業)は、インサイドセールスがECや電話で温めた見込み顧客情報を受け取り、最適なタイミングでクロージングに向かう「司令塔」としての役割を担います。
④ カスタマーサクセス(CS)の推進
「売って終わり」ではなく、EC導入後の顧客体験を向上させる役割です。顧客がECを使いこなせているか、業務効率化につながっているかをフォローし、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指します。
⑤ EC普及のエバンジェリスト(伝道師)
顧客に対して「FAX注文よりもECの方が、履歴も確認できて便利ですよ」と啓蒙し、顧客側のDXを支援する役割です。これは、単なる利用促進ではなく、顧客の業務効率化パートナーとしての信頼獲得につながります。
3. 営業DXを成功させる組織変革と意識改革の重要性(評価制度の見直し)
組織変革と意識改革とは、デジタル化に合わせて営業部門の目標設定や評価基準(KPI)を再設計することです。 例えば、これまでの「売上金額」だけを評価する仕組みでは、営業担当者がECへの注文移行を拒む原因になりかねません。「ECへの誘導率」や「顧客のLTV(生涯顧客価値)向上」を新たな評価軸に加えることで、組織全体でDXを推進する体制が整います。
BtoB ECとフィールドセールスの最適な分業体制(ハイブリッド営業)

最適な分業体制(ハイブリッド営業)とは、デジタル(EC)とアナログ(人)それぞれの得意分野を活かして顧客対応を行う仕組みのことです。
例えば、小口注文やリピート発注は「BtoB EC」に任せて効率化し、大口案件や新規開拓、複雑な商談は「フィールドセールス(営業担当者)」が担当するといったように、顧客セグメントに応じた役割分担を行うことで、生産性を最大化できます。
| セグメント | 特徴 | 主な対応チャネル | 担当者の役割 |
|---|---|---|---|
| ハイタッチ | 大手顧客・重要顧客 | フィールド営業 | 深耕営業・大型提案・接待 |
| ミドルタッチ | 準大手・成長顧客 | インサイドセールス | 電話/メールでの提案・EC利用促進 |
| テックタッチ | 小規模・ロングテール | ECサイト・メルマガ | 自動化されたマーケティング・セルフ発注 |
評価指標(KPI)の刷新
「自分の担当顧客がECで注文すると、自分の売上にならないのでは?」という不安は、営業がEC普及を拒む最大の要因です。これを防ぐため、以下の評価制度導入が推奨されます。
- テリトリー制(売上の紐付け): 担当顧客のEC経由の売上は、100%その営業担当者の成果としてカウントする。
- プロセス評価の導入: 売上金額だけでなく、「ECへの移行率(デジタル化率)」や「WEB会員登録数」を評価項目に加える。
- チーム評価へのシフト: 個人の数字だけでなく、インサイドセールスやマーケティングを含めたチーム全体での目標達成を重視する。
4. 変化に適応するためのスキルアップと教育
新しい役割を担う営業担当者には、リスキリング(再教育)が必要です。企業として以下のようなスキル習得を支援するプログラムを用意しましょう。
- デジタルリテラシー研修: 自社ECの操作方法はもちろん、Zoomなどのオンライン商談ツール、CRM(顧客管理システム)の活用法。
- データ分析基礎: ダッシュボードを見て「どの顧客にアプローチすべきか」を判断する力。
- ソリューション提案力: 商品単体ではなく、顧客の課題解決を軸にした提案手法。
現場任せにするのではなく、経営主導で「デジタル時代の営業人材」を育成する姿勢が不可欠です。

まとめ:EC導入は営業担当者の価値を最大化するチャンス
BtoB ECの導入は、営業担当者から仕事を奪うものではありません。むしろ、「単純作業はデジタルへ、創造的な仕事は人へ」という適切な役割分担を実現し、営業担当者がより顧客に感謝される仕事に集中できる環境を作るための施策です。
重要なのは、システムを入れて終わりにするのではなく、「人の役割」と「評価制度」をセットで変革することです。この両輪が回って初めて、真の営業DXが実現します。
変化を恐れず、ECという強力なパートナーと共に、新しい営業スタイルへと進化していきましょう。
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