人手不足が常態化するなかで、BtoB取引の受発注業務をいかに効率化するかは、もはや一部の先進企業だけのテーマではなく、ほとんどの企業に共通する経営課題になりつつあります。
しかし、現場に目を向けると、「デジタル化したいのに、なかなか進められない」という声が後を絶ちません。なぜ、DXの必要性が広く認識されているはずなのに、これほどまでに受発注DXは足踏みしてしまうのでしょうか。
本記事では、株式会社ウキヨがBtoB受発注業務の担当者400名を対象に実施した独自調査の結果を、国(公的機関)が公表する最新データと照らし合わせながら、「進めたいのに進まない」背景にある構造的な課題を読み解いていきます。
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まず押さえておきたいのは、受発注DXの必要性を押し上げている「人手不足」のマクロ環境です。
帝国データバンクの調査によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は2025年10月時点で51.6%にのぼり、4年連続で半数を超えました。女性やシニアの就業が進み、就業者数自体は増えているにもかかわらず不足感が解消されないことから、人手不足は今後も長期的に高止まりすると見られています。
その影響は経営に直結しています。同社の調査では、人手不足を原因とした倒産は2024年度に350件にのぼり、企業が挙げる業績の下振れ材料としても「人手不足の深刻化」が上位を占める状況が続いています。限られた人員で売上を維持・拡大していくためには、受発注のような定型業務をいかに省力化し、人の手を付加価値の高い仕事に振り向けるかが避けて通れないテーマになっているのです。
市場のEC化率は43% それでも現場のデジタル化が進まない理由

マクロのデータだけを見れば、企業間取引のデジタル化はむしろ進んでいるように映ります。経済産業省が公表した「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2025年のBtoB-EC市場規模は514兆4,069億円(前年比10.6%増)、EC化率は43.1%に達しています。
しかし、この数字どおりに受け取ることはできません。経済産業省のEC化率にはEDI(企業間の電子データ交換)が含まれており、一般的なWeb受発注の利用率よりも高く算出されています。市場規模の押し上げも、大手小売や大手スーパーを中心としたEDI標準化の進展が大きく寄与しているとされ、その実態は「大手主導のデジタル化」という側面が強いのです。
一方、中小規模の取引や個別の発注現場では、依然としてアナログな手段が根強く残っています。東京商工会議所の「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」では、受発注における「電話・FAXによる受発注」が約2割を占めると報告されています。しかもこの調査は、口頭連絡や電話・帳簿中心の最もアナログな企業を集計対象から除いたうえでの数字です。つまり、市場全体のEC化率が高く見えても、現場レベルではデジタル化が追いついていない現況もあり、このマクロとミクロのギャップこそが、今回の調査を実施したきっかけです。
【調査でわかった実態】非効率だと「分かっている」のに、変えられない

では、現場の担当者は受発注業務をどう捉えているのでしょうか。ウキヨが受発注業務の担当者400名に行った調査では、過半数にあたる55.75%の企業が、手作業による受注対応を「生産性を下げる課題」と認識していることが分かりました。
ところが、受注対応を完全にシステム化できており手作業が発生していない企業は、わずか10.75%にとどまります。「課題だと分かっているのに、変えられていない」という理想と現実の大きなギャップが、ここに表れています。
さらに見過ごせないのが、その手作業の負担が売上に直結する業務の時間まで奪っているという点です。調査では、4割を超える企業が「既存顧客への定期的なフォロー・サポート」に十分な時間を割けていないと回答しました。受発注の手作業は、単に処理速度や正確性の問題にとどまらず、本来注力すべき顧客関係づくりの時間を圧迫しているのです。
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「BtoB取引における受発注業務の実態」調査レポート2026 「分かっているのに進まない」背景にある構造を、設問ごとの全回答データとともに完全版レポートで解説しています。 ▷ 詳細を確認する【DXの壁①】取引先に合わせざるを得ない「運用面の壁」

では、なぜシステム導入が足踏みするのか。調査では、その障壁が大きく二つの方向に分かれることが分かりました。ひとつ目は、取引先(外部)に起因する課題です。
最も多く挙がったのは、「取引先ごとに発注方法(電話・FAX・メールなど)がバラバラであること」で、43.5%にのぼりました。自社がどれだけシステムを整えても、注文を出すのは取引先です。複数の発注手段が混在していると、受注する側だけでは標準化を進められません。
加えて、「取引先が今のやり方を変えたがらない」(17.8%)、「ITリテラシーの低い取引先には対応してもらえない」(17.25%)といった、取引先側の事情に起因する課題も一定数挙がっています。相手の商習慣やITスキルに左右されるため、自社の都合だけではデジタル化を進められない。これが、現場が直面する運用面のリアルな壁です。
【DXの壁②】柔軟な顧客対応が失われる「営業面の懸念」

もうひとつは、自社(受注側)に起因する壁です。これは運用上の問題というより、「デジタル化によって、これまで培ってきた強みが損なわれるのではないか」という、情緒的・営業的な懸念です。
具体的には、「顧客ごとの柔軟な関係構築がシステム化で失われてしまう」(26.25%)、「自社システムの仕様に合わせると、個別の柔軟な対応ができない」(24.55%)といった懸念が、それぞれ約4分の1の企業から挙がりました。BtoB取引では、取引先ごとの細やかな個別対応が長年の信頼関係や競争力につながっているケースが多く、効率化のためのシステム化がかえって営業力を削ぐのではないか、という不安が意思決定にブレーキをかけています。
受注業務の効率化を進めれば柔軟な顧客対応が犠牲になり、柔軟さを守れば効率化が進まない。一見相反するこの二律背反こそが、BtoB受発注のデジタル化を難しくしている本質的な理由だといえます。
“二律背反”をどう乗り越えるか。これからの受発注の設計図

ここまで見てきたように、BtoB受発注のデジタル化が進まない背景には、「取引先起因(外部)の壁」と「自社・営業起因(内部)の壁」という、性質の異なる二つの課題があります。発注方法のバラつきという運用面の問題と、顧客対応の柔軟さを失いたくないという営業面の問題は、立場も論点も異なるため、単一のシステムへ一律に統一するだけでは現実的に解決しきれません。
重要なのは、「効率化」か「顧客対応力」かの二者択一で考えないことです。電話・FAX・メールといった既存の発注手段を無理に切り捨てるのではなく、受注側でそれらを一元的に取り込みながら、段階的にデジタルへ移行していく。そして、定型業務はシステムに任せ、人は個別対応や関係構築に集中する。こうした「両立を前提とした設計」へと発想を切り替えることが、突破口になります。
では、企業は具体的にどのような将来像を描くべきなのか。今回の調査では、約7割の企業がひとつの方向性を支持していました。その具体的な中身と、設問ごとの全回答データ・当社独自の考察は、調査レポート本編(全10ページ)でご覧いただけます。
まとめ|まずは自社の“現在地”を知ることから
今回の調査と国の最新データから見えてきたのは、BtoB受発注のデジタル化が「進めたいのに進まない」背景には、明確な構造的課題があるという事実です。人手不足は高止まりし、市場のEC化率は上がっているように見えても、その中身は大手主導であり、多くの現場ではアナログな受発注が残り続けています。そしてその裏側には、外部(取引先)と内部(自社・営業)という、立場の異なる二つの壁が存在しています。
これらを乗り越える第一歩は、自社の受発注業務がいま「どの段階にあるのか」という現在地を正しく把握することです。本調査レポートは、その検討の出発点としてご活用いただけます。
▼約7割の企業が答えた最適な方法とは
「BtoB取引における受発注業務の実態」調査レポート2026 本記事で紹介した調査の全設問データ、約7割の企業が支持した“ひとつの方向性”の中身、そして当社独自の考察を完全版にまとめています。自社の受発注業務をどう設計し直すべきか、その検討にぜひお役立てください。 ▷ 詳細を確認するなお、貴社の状況に応じた具体的な進め方については、個別の「壁打ち相談」も承っております。お気軽にご相談ください。
※本記事で引用した外部データの出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2025年10月)」、経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表)、東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年1月)。

